地方物件の方が利回りが高いのでリスクは少ないのでは?
確かに、地方では高利回り物件が多く出回っています。
どのような投資商品でも“投資”である以上、高い利回りを追求するというのはごく自然なことですが、
一般的には“利回り”が高まれば“リスク”も高まってきます。
不動産に限らず、投資商品には必ずリスクがあります。
リスクが高い投資でリターンが少なければ商品としては成り立ちません。
どのような投資商品でも一般的にリターンが大きくなる程、リスクが大きくなるという認識を持つ必要があります。
地方物件も同様のことがいえますので運用した場合のリスクについて掘り下げてご紹介させていただきます。
《もくじ》
1、地方物件を検討する方が増えた背景
2、地方物件で満室運用は可能か
3、大学移転・企業移転
4、都心回帰による人口流出
5、まとめ
1、地方物件を検討する方が増えた背景
まずは地方物件を検討する方が増えた背景について説明します。
結論から申し上げると、都内の不動産に比べて安価で購入出来るということです。
都内不動産に比べると賃料は下がりますが、価格についても大幅に下がる為、結果として利回りは良くなります。
地方で区分マンションや戸建てを購入しようとした場合、物件によっては数百万円で購入出来るものもあります。
株式投資やFXなどを始めようとした場合に、“やり方を覚える”“いきなり大きい資金を投下するのは怖い”という理由から小口投資から始めるという方は多いと思います。
それと同じような感覚で、「本当は都心部が良いのは何となくわかるけど…」というのは皆さん共通の認識となりますが、まずは手持ちの現金で購入出来る小さいものということで地方物件にたどり着くというわけです。
また区分ではなく一棟で運用しようとすると、都内好立地のアパートや一棟マンションを購入しようとした場合、数千万円という単位では済みません。よほど建物が古かったり、瑕疵(欠陥)等がある場合を除き、木造アパートでさえ“数億円”という規模になることがほとんどです。
今、不動産投資をやられている方は一般サラリーマンやOL、公務員の方など職種や年齢層は様々です。いずれにしても一般人で数億円という現金を所有している方は全体としてかなり少ないかと思います。
では、そうなると金融機関から融資を受ける形となります。
当たり前のことですが、誰でも無限に資金を借りられるというわけではありません。
金融機関ごとに審査基準が設けられ、「年齢」「収入」「勤め先」「既存の借入れ」等、様々な
審査項目がある中で、“融資額”や“金利条件”等は人それぞれとなります。
一般の方が大きい規模の不動産で運用しようとなると手持ち資金と融資額により、ご自身が検討できる物件数が絞られ、結果的に、資金面で必然的に郊外という選択肢しかないというのが現実のようです。
不動産価格は土地と建物の値段が合わさった金額です。
建物自体は、よほど特殊な地形でない限り、日本のどこに建てようが金額はさほど変わりません。
では、安い不動産と高い不動産の違いはなにか?
答えは“土地”です。
土地について戸建て住宅だとイメージしやすいかと思いますが、それは分譲マンションだとしても同様です。
マンションは建物だけというイメージをお持ちの方が多いですが、“土地付区分所有建物”となりますので
各所有者の持分割合に応じて土地も所有していることになり、土地代も物件価格に含まれています。
土地について、毎年、公示地価や基準地価が発表されています。
ご覧になればお分かりですが、同じ日本だと思えないくらい東京と地方ではかなり大きな差がうまれています。
2、地方物件で満室運用は可能か
ポイントとなるのは、地方物件でも満室運用は可能かどうかです。
先に説明したように、地方物件となると都内に比べて価格が大幅に下がる為、必然的に利回りが高くなります。
価格が安くなる上に利回りが高いとなると、満室運用が出来ればそれに越したことはありません。
一棟物件については、“ローン返済”や“諸経費”がかかりますが、それを上回る家賃収入が毎月入ってくるのでお小遣いを得ながら運用出来る可能性があるというのが魅力の一つです。
しかし、不動産投資は今非常に人気が高まっていることで、実際は地方物件についても徐々に価格が上がっています。
融資条件や価格についても若干変わってきますが、現在は90%以上の入居率を維持できないとお小遣いがもらえない計算になることが多いです。
では果たして地方物件で満室運用は可能なのでしょうか?
…答えとしては、誰にもわかりません。
しかし現実は、地方物件で空室が続いて悩んでいるオーナーが多いことはまぎれもない事実です。
空室が多い理由については、これからご説明させていただきます。
まず大前提として、入居者の対象となる方がどの程度いるかが重要となります。
基本的に都内から離れれば離れるほど持ち家志向が強くなる傾向にあります。
各都道府県の持ち家比率と借家比率の一部をご紹介します。
「持ち家比率」はご自宅を所有されている方、「借家比率」は民間賃貸住宅にお住まいの方の世帯割になります。
(総務省統計局「社会生活統計指標―都道府県の指標―2014」から2008年のデータ)
1位 秋田県 持ち家比率78.4% 借家比率21.0%
2位 富山県 持ち家比率77.5% 借家比率21.6%
3位 福井県 持ち家比率77.4% 借家比率20.9%
4位 山形県 持ち家比率75.5% 借家比率23.6%
5位 新潟県 持ち家比率73.9% 借家比率24.4%
5位 岐阜県 持ち家比率73.9% 借家比率24.9%
:
47位 東京都 持ち家比率44.6% 借家比率49.0%
このように、都道府県によっても比率は大きく変わってきます。
一ついえるのは、地方は「自分の城を築いて一人前」という志向が強いということです。
地方にお住まいの方とお話すると一度も賃貸に住んだことがないという方も多くいらっしゃいます。
そのようなエリアだと仮に賃貸入居者がついていたとしても、ある程度の資金が貯まったら購入してしまう可能性があります。
持ち家比率が高いエリアで、はたして満室稼動は可能なのでしょうか?
短期ではなく、長期に渡って運用する投資なので、その点を踏まえてご検討いただく必要がありそうです。
3、大学移転・企業移転
地方物件でも、さすがに畑や田んぼに囲まれていて、近くに何もないような物件であれば検討すらしないと思います。
地方物件の購入の決め手となるのは、入居者の見込みが立ってからとなるはずです。
例えば、大学や工場です。
どんなに地方の物件でも、大学が近くにあるとなると話は別です。
大学生で学校近くの不動産をわざわざ購入して住むという方はまずいないので、賃貸需要に直結します。
また、一度住んでくれたら4年間は住み続けてくれる可能性があるからです。
その為、大学のキャンパスが集中している多摩や八王子周辺には大学生向けの賃貸物件が多く建てられました。
多摩・八王子等の郊外に大学キャンパスが多いのには理由があります。昭和34年に東京都心部への人口集中を回避する為に、都心部に大学や工場などの新設を制限する“工場等制限法”が制定されたという背景があります。
しかし、最近は多摩・八王子に投資物件を所有している方からの空室相談を多く頂戴するのも事実です。
その工場等制限法が廃止され、都心部に大学を移転・新設できるようになりました。
学生も交通の便や遊び、アルバイト、就職活動という点で都心部の方が好都合です。
大学も学生を集めたいので次々に大学の移転を決めています。
直近では下記の通りです。
2009年 実践女子大学 日野 ⇒ 渋谷
2009年 國學院大學 横浜 ⇒ 渋谷
2012年 帝京大学 相模原 ⇒ 板橋
2012年 専修大学 生田 ⇒ 神田
2013年 青山学院大学 相模原 ⇒ 青山
2013年 東京歯科大 千葉 ⇒ 水道橋
2015年 拓殖大学 八王子 ⇒ 文京
2015年 大妻女子大学 挟山台 ⇒ 千代田
2016年 杏林大学 八王子 ⇒ 三鷹
2016年 東京理科大 久喜 ⇒ 神楽坂
一つの大学でも何千名という学生数となりますので、賃貸に与える影響がいかに大きいかがわかります。
また、工場についても同様です。
三重県亀山市では、県と市で合わせて135億円という補助金を捻出し、大規模な工場を誘致しました。
液晶テレビでは、一時「世界の亀山」としてブランド化も成功しており、当時は亀山市内の雇用が大幅に増え、周辺では不動産が多く建てられたり、賃貸需要も大幅に増えたということがありました。
しかし、その6年後、大阪府堺市にさらに大規模な工場が稼動したことや、世界的な景気後退の波を受け、
工場は一部操業停止し、亀山市から人が大きく流れ出しました。
結果、半年以上も入居者がつかないオーナーや売りに出すオーナーも多くあらわれました。
このように、地方物件の場合は一つの施設(大学・工場・企業)に依存しすぎているというケースが多く見受けられます。
賃貸需要につながる施設が物件の近くにあるということは非常に重要なことですが、上記の例のように、一生そこにあるという約束はありません。
将来的にその施設が無くなったとしても問題ないのか?
という部分まで掘り下げて考える必要がありそうです。
4、都心回帰による人口流出
そして、もう一つ重要な指標が“人口動向”になります。
ご存知の通り、今や大都市への一極集中が加速しています。
2015年2月6日(金)日本経済新聞にて総務省の発表を基にした47都道府県の2014年の人口動向(転入・転出の超過率)に関する記事がございました。
47都道府県の中で、人口が増えた都道府県は「埼玉県」「神奈川県」「千葉県」「愛知県」「福岡県」「宮城県」そして「東京都」の7都県です。
2位は埼玉県の14,909人の転入で1位は東京都の73,280人の超過数となり、その数、2位の約5倍と他県を圧倒しています。
逆に減っている道県としては
1位 北海道 ▲8,942人
2位 静岡県 ▲7,240人
3位 兵庫県 ▲7,092人
4位 青森県 ▲6,460人
5位 長崎県 ▲5,853人
このような結果となります。
上記統計については、住民基本台帳(住民票)の異動数で集計をしています。中には住民票を動かさないで、体だけ移動されている方も多いので、実際の数字はまた変わってくるはずです。
これは2014年に始まったというわけではなく、だいぶ前から東京への一極集中という図式はありました。
地方で自宅を購入している方であれば、すぐに移動するのは難しく、気軽に転職というわけにはいきませんが、賃貸の方であれば、簡単にどこでも引越しは出来るので離れてしまう可能性があります。
東京については世界的に見ても企業が集中しており、働き口もたくさんあります。また、平均年収も47都道府県で1位となります。今後もこの傾向はさらに強くなるのではないでしょうか。
5、まとめ
まとめとなりますが、不動産投資は入居者ありきの投資です。
どんなに利回りが高くても、入居者がいなければ意味がありません。
また、長い目でみる必要がありますので、将来的にも賃貸需要が安定するという予測が立てられなければ、常に不安や焦りを感じながら運用することになってしまいます。
当社については、どんなに利回りが高いとしても、地方の物件については積極的にはご紹介していません。収益性や資産性という点で、オーナー様にとって安心出来る運用になるとは思えないからです。
目先の利益や利回りも、もちろん重要かと思いますが、
人口動向・世帯動向・地価・開発予定等々、様々な視点からご検討いただくことをおススメします。